巣鴨の歯医者「ヴェリ歯科クリニック」が発信する歯の知識

あなたの噛み合わせはずらした位置で噛んでいる?知ってほしいエングラムのこと

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噛み合わせは人それぞれ違いますが、顎関節症のように噛み合わせによって歯や顎、筋肉が傷んでしまう方もいらっしゃいます。

なぜ噛み合わせの不調で痛みが出てくるのでしょうか。

筋肉と歯と噛み合わせの関係から、本日は、本来の噛み合わせからずらして噛んでいる現象についてお話しいたします。

ずらして噛むってどういうこと?

と疑問に感じますが、実は人は、今噛んでいる噛み合わせを無意識のうちにずらして噛むことができるのです。

ずらし噛みのメカニズム、エングラム(Engram)について

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人は自分の噛み合わせで何か異常や危険を感じると脳の中で無意識な回避行動をとります。

回避行動をとるためいつもの噛み合わせとは違う少しずれた位置で噛もうとします。

実はこの噛み合わせは本来の位置とは異なる位置ですが、脳は違和感なく無意識にそこで噛もうとします。

これは脳の中で異なった位置を習慣性の位置としてプログラミングされます。

このことをエングラムと言います。

エングラムになるのはどのような時が多いのでしょうか。以下に挙げます。

早期接触を受けた場合

早期接触とは人間が歯と歯を噛み合わせる時に一番最初に当たる歯と歯のことです。

早期接触について詳しくはこちら

早期接触を起こすと強い力が歯に加わります。

歯に強い力が当たらないよう噛み合わせをずらすよう脳がリプログラムします。

歯自体に大きな病気があり、接触すると痛みが強く出るとき

例えば右側に大きな病気の歯があり、噛むと痛い場合、無意識に左側で噛もうとしますよね。

この状態に似ています。

痛みがある状態が慢性化すると顎や脳はずらしたところで噛むことを無意識に正常な噛み合わせだと誤認識してしまいます。

歯にヒビや亀裂があり、接触すると痛みが出るとき

歯にヒビや亀裂がある場合も同様に、歯が強く患歯に当たらないよう回避した噛み合わせを作ります。

強い噛み合わせの力が歯に当たる時

歯には前歯から奥歯までありますが、歯によって受ける力が決まっています。

奥歯は強い力を受け止める許容力がありますが、前歯に行くに従い受け止められる力は小さくなります。

例えば犬歯に強い力(800〜1000μmの力)を受けるとそれを避けるように歯はずらして噛むようになります。

つまり噛み合わせの力が強い場合、歯に強いストレスが加わりますが、

許容力がない歯には痛みが生じるため、エングラムで回避された噛み合わせを作ります。

顎関節に異常がある場合

顎関節に口の開閉口時に痛みが発生する場合、歯の噛み合わせをずらした位置で開閉口をすることがあります。

この間違った位置での開閉口が脳によってリプログラムされ正常な位置と誤認識する場合があります。

エングラムでずらした位置になると顎や歯はどうなるの?

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エングラムによる間違った位置での習慣化された噛み合わせは放っておくとどうなるのでしょう。

ずれた位置で噛むため左右どちらかの筋肉が引っ張られ、どちらかが収縮します。

引っ張られた筋肉は、ストレスが慢性的に続き、ある時点をきっかけに筋疲労からの、微小な筋断裂が起こります。

また別の筋肉は過緊張が常に起こるので、指で押すと痛みが生じます。

これを圧痛と言います。

引っ張られた筋肉は押すと痛い圧痛が生じますが、それ以外としては歯に次のような影響が出ます。

①虫歯になりやすくなる

歯に不調和な力でストレスが加わると歯は微小な亀裂が生じます。

この亀裂から虫歯の細菌が侵入するため、虫歯になりやすくなります。

②歯槽膿漏、歯茎が炎症になる。

ずれた噛み合わせは時に歯を支える骨を吸収させます。

二次性咬合性外傷と言います。

噛み合わせによって歯周炎がおこる現象です。

③歯に亀裂が生じる

歯にアンバランスな力が加わります。ずらした噛み合わせで歯にダメージが加わってしまうこともあるのです。

④歯が移動する

ずらした場所の噛み合わせの歯が傾いていたり、位置が悪かったりした場合、傾いてる歯がさらに傾いてしまったりすることがあります。

エングラムを解除するためには

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脳がリプログラムされたずれた位置の噛み合わせを一旦リセットしなければなりません。

そのためにはまず本来ある顎の正常な噛み合わせを作ります。

顎の本来の位置、中心位を見つけ顎を中心位に記憶させる治療が必要です。

中心位についてはこちら

顎がずれた位置で噛んでいる状態が慢性的に長ければまずマウスピース(オクルーザルアプライアンス)で顎をリラックスさせます。

マウスピースについてはこちら

その後噛み合わせを調整したり、歯の治療で適正な噛み合わせを作ります。

まとめ

噛み合わせの不調は目に見えない、そして診断しづらい病気です。

虫歯や歯周病のようにレントゲンや検査ではっきりビジュアル化してればわかりやすいのですが、レントゲンや検査をしても異常がない場合が多いです。

歯科医院で歯が痛くて受診をしても虫歯や歯槽膿漏が見つからなかったら、もしかしたら噛み合わせを疑ってもいいかもしれませんね。

もし悩んでいたら担当の先生にご相談くださいね。