こんにちはヴェリ歯科クリニックの院長田島です。
昨今歯科治療における麻酔について残念なニュースが話題になっています。
昨年7月、福岡の小児歯科医院で2歳の子供に麻酔を使った治療を行いましたが、容態が急変し残念ながら亡くなられました。
こういった麻酔と歯科治療の死亡事故は過去にも起きています。
2002年、埼玉深谷の歯科医院で4歳児に局所麻酔をしたところアナフィラキシーショックにて亡くなられました。
2007年にも山梨県で全身麻酔にて歯科治療をした知的障害の9歳児も亡くなられています。
今回は歯科治療の麻酔で死亡が起こることについてと麻酔を使わない歯科治療についてまとめてみました。
目次
歯科治療の麻酔で死亡するわけとは?
歯科治療の麻酔には主にキシロカインと呼ばれる薬剤とそれにエピネフリンが含まれた薬剤を主に使います。
エピネフリンは血管を収縮させて麻酔を浸透しやすくさせたり、患部からの出血を抑える特徴があります。
キシロカインの局所麻酔でなぜ死亡するのでしょうか。主にこんな要因があります。
アナフィラキシーショック
局所麻酔によるアナフィラキシーショック(重篤なアレルギー)は滅多な人には起きませんがないわけではありません。
皮膚や顔が赤くなったり、発疹したりする遅延型アレルギーが起こる人が多いですが、アナフィラキシーを起こすと脈が速くなる(頻脈)になり血圧が低下します。
キシロカイン自体は比較的安全ですがそれに含まれている防腐剤(メチルパラベン)などが原因のようです。
低酸素脳症(局所麻酔中毒)
局所麻酔薬が誤って血管などに注入されてしまうと血中の麻酔濃度が高くなり、痙攣、意識朦朧などの中毒症状が起きます。
福岡の事例では死因は低酸素脳症のようでした。
神経性ショック
歯科治療は誰だって不安ですよね。ドキドキしすぎて倒れる方もいます。これを神経性ショックと言います。不安や緊張が過度に起こっている方はこれに当てはまります。
特徴は顔面蒼白、冷や汗、徐脈、血圧下降、ひどい場合は意識消失が起こります。
なるべく患者さんが不安にならないよう治療することが重要ですね。
局所麻酔で安全に治療するために必要な事
私たち歯医者が安全に歯科治療を行うために知っておきたいこととして、
まずは患者さんとの信頼関係
患者さんと信頼関係が築けていない状態での歯科治療は不安を増大させたり、ストレスをかけてしまいます。
痛みや不安によって神経性ショックが起こることもあります。
どうしても無痛で治療を行いたい方は静脈鎮静で行う方もいます。
麻酔を注入するときはゆっくりと電動麻酔
麻酔薬は数年前までは1.8mlの麻酔薬を手動で行っていましたが、実は0,5~1.0mlで十分奥歯でも麻酔薬は効きます。ゆっくり電動麻酔を使って注入することで局所麻酔中毒になることを防止します。
異常に気付いたらすぐに治療中断、救急処置を行う
歯科治療中でも常に患者さんに声をかけたり、状態を観察しなければなりません。
声がけに反応しなかったり、異常だと感じた場合は直ちに歯科治療を中止して対処しなければなりません。
麻酔を使わない歯科治療ってある?
では麻酔を絶対に使わないで治療できないのか?患者さんの痛みを感じる度合いは個人個人違いますが、知っておきたい麻酔を使わない3つの治療法についてご紹介します。
カリソルブで無痛治療
カリソルブとはスウェーデンで開発された治療法で、歯を削らずに虫歯をとかす治療法です。
虫歯の部分にカリソルブを塗ると虫歯部分のみが解けるんです。
あとは専用のスプーンで虫歯を取り除きます。
麻酔を使わない代表的な治療法ですが、虫歯の範囲が深刻な場合は向いていません。
歯科用レーザーを使った無痛治療
歯科用レーザーではそのレーザー熱によって歯の痛みのセンサーを鈍感にする能力があります。
レーザー熱の作用によって無痛的に治療を行えます。歯科用レーザーの中でもイリジウムヤグレーザーは歯を削る能力もあるので無痛レーザー虫歯治療が行えます。
ただ全ての人がいたみがなく行えるわけではないです。
ドックベストセメント治療
深い虫歯の方にはドックベストセメント治療がオススメです。
虫歯が深ければ深いほど神経に近く痛みが増していきます。ドックベストセメントは虫歯はあえて残すコンセプトで開発された治療法です。
虫歯部分にドックベストセメントを塗って殺菌効果を期待します。神経近くまで削るときの痛さはなんとも言えませんよね。
全ての虫歯の人がドックベストセメント治療は効果があるとは言えませんが、麻酔を使わない有用な方法の一つです。
まとめ
虫歯治療で使う麻酔はどうしても痛みをなく治療行うためには欠かせないものです。
安全に麻酔を使うためにまずは患者さんと歯医者さんの関係を築き上げた上で治療は行いたいものです。
また何か異常があった時に治療を中断するのも大事です。
しかしまずは麻酔を使うような大きな虫歯にならないようケアしていただくのが一番ですね。
参考文献
局所麻酔における偶発性
http://www.showayakuhinkako.co.jp/medical/odt/odt04.pdf
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