こんにちは、ヴェリ歯科クリニック院長の田島です。
虫歯の治療でたくさん歯を削られてしまい、神経を取ってしまった方に読んでいただければ幸いです。
虫歯が歯の深くまで進行していると歯の神経を取らなければいけなくなります。今回はなるべく神経はとりたくないと思っている方に知ってほしいお話です。
ドックベストセメント
ドックベストセメントをご存知でしょうか。ドックベストセメントは虫歯が大きくて神経まで取らないといけないくらい進行している時に使う殺菌効果のあるセメントです。
虫歯の進行状況によってドックベストセメントが使用できる範囲は限られてしまいますが、うまく神経を残せた場合は歯の寿命を延ばすことができるのではないのでしょうか。
ドックベストセメントについてはできない場合もあるので詳しくはこちらを読んでください。
ではどのようにしてドックベストセメントで治療するのでしょう。
ドックベストセメントの治療手順をお話します。
ドックベストセメントの治療手順
①虫歯の治療をします。
虫歯を削るとき神経の近くまで削ってしまうと、神経が出てきたりまた歯髄炎という神経の炎症が起きてしまいます。
神経の近くにある虫歯は残して、その周囲にある虫歯を可能なかぎり除去します。
②洗浄、乾燥します。
歯の深部にまだ虫歯が残っていることがわかります。削り終わった状態が可能なかぎり清潔な状態でドックベストセメントを作用させたいので、できるかぎり清潔に洗浄します。
医院に寄って殺菌水や精製水、また補助的な殺菌治療を取り入れているところもあります。
③ドックベストセメントコーパライト、セメントを虫歯の部分に塗布します。
ドックベストセメントにはコーパライトとセメントがあるので虫歯の部分に両方を塗布していきます。約３分くらいで硬化します。
④クッション材（覆頭材）をはります。
（一番奥の歯にドックベストセメントとバルクベースセメント）
ドックベストセメントの上に直接詰め物を接着することも可能ですが、ドックベストセメントとセラミックやプラスチックをつけるレジン系セメントは接着してくれません。
セラミック、プラスチックがしっかり接着できるようにドックベストセメントの直上にレジン系の層を作ります。
⑤詰め物をつける。またプラスチックを充填する
（一番奥の歯にPGAインレーをつける）
セラミックの詰め物や、金属の詰め物の場合、ここまで仕上がったら形を少し成形して型取りを行います。
プラスチックで直接充填して歯を作る場合（ダイレクトボンディング）もあります。
⑥経過観察
ドックベストセメントが十分作用しているかを判断するため注意深く経過観察を行う必要があります。
また虫歯の状況によってはドックベストセメントを塗布してから即時に詰め物をせず、しばらく仮のセメントで様子を見てから詰め物へ移行する場合もあります。
ドックベストセメント治療こんな時どうする？
Q 虫歯の範囲が大きすぎて詰め物やプラスチックでは補修できないくらいの場合はどうするの？
A 虫歯が大きすぎる場合は歯の補強も考えなければなりません。場合によっては被せ物で対処することもあります。
虫歯が多いことが予想されるので、いきなり被せ物を作るのではなくドックベストセメントを入れた歯に仮歯を被せ、しばらく症状を診ます。
問題がなければ被せ物を付けていきます。
Q １本だけでなくたくさん虫歯がありすぎてドックベストセメントをしたいのだけどどうするの？
A 虫歯をドックベストセメントで治療する場合でしばらく仮のセメントで様子を見る時には要注意が必要です。
仮のセメントが複数の歯で見られると噛み合わせに影響が出る可能性があります。
仮のセメントは常に噛んでいるとどんどん溶け出したり、かけたりして小さくなることもあります。ドックベストセメントで覆われた仮のセメントがなくなり再感染した方もいらっしゃいます。
その場合はセメントを付け直すか、そうそうに補綴処置（詰め物をつける）に移行する必要があります。
Q ズキズキ痛んできた歯をドックベストセメントで治療したいのだけど？
A 残念ながら症状からすると歯髄炎が生じた可能性があります。またまだ神経は生きている状態かもしれませんが、のちに死んでいく可能性があります。
十分担当の先生と相談し治療の可否についてお話ししましょう。
Q ドックベストセメントで治療した歯が痛くてどうしようもないのだけど
A ドックベストセメント治療が残念ながらうまくいってない可能性があります。
- 治療中の刺激によって神経が疼き出した。
- そもそも虫歯が神経の内部にすでに感染していた。
- 神経が露出していた。
などが挙げられます。痛みを取るためには神経の治療が必要になります。
まとめ
なるべく歯の神経をとりたくない患者さんの気持ちは歯医者さんだってわかります。
できることなら神経を残して治療をしたいのですが、虫歯を完全に取りきることは世界共通の歯医者の認識です。
ドックベストセメント治療は海外ではあまり普及されていないようです。そのため、治療法には賛否両論がありますが神経をとりたくない患者様には救世主のような治療法ですね。
ドックベストセメントはすべての方に適用できる治療法ではありません。治療のメリット、デメリットを踏まえてよく検討して担当の先生と相談して治療を考えてくださいね。
