こんにちは、ヴェリ歯科クリニック院長の田島です。
過去に治療中の歯で神経の治療をされた方、または今現在神経の治療をされている方に一読していただければと思います。
患者様の中で神経の治療をされた後、治療を中断されそのままにしているかた、いらっしゃいますでしょうか。
神経の治療の後なるべく早期に歯に土台建てを行わなければなりません。
神経の治療後に行う土台建ての治療法やタイミングについて今回はお話ししたいと思います。
目次
築造処置(土台建て)
歯の神経を取った後に行う土台建ての事を築造処置と呼びます。虫歯が大きくてやむなく歯の神経をとった後、数回の神経の治療の後に根管充填と一般的に呼ばれますが、治療された根の神経の通路を歯科材料で充填します。
根管充填の後に行う処置が築造処置(土台建て)になります。
土台建てですが直接法と間接法があります。
直接法
直接法とは根管充填の後にお口に中で直接土台を作り上げる処置です。
根管口周囲の充填材を取り除き、歯の内部に歯科用のボンディング剤を塗布後、歯科用プラスチックにてそのまま土台を築造していきます。
直接法で行える材料には内部に金属のピンを立てて行うピンコアとファイバーポストが内蔵されたファイバーコアがあります。
間接法
間接法とは根管口部の充填材を取り除いた後に歯根方向へ数mm削って土台が維持できるための穴を掘ります。
その後型取りをして歯科技工所で土台を作る方法です。つくられた土台は歯科セメントにてつけられます。
間接法でつくられる素材として金属製のメタルコア、ファイバーコアがあります。
土台建ての方法は直接法、間接法どちらがいいの?
20年以上前の歯科治療ではまだ現在のような接着技術がありませんでした。
また強度性のあるプラスチックが開発されていない時代でしたので直接法、間接法とも特に有意差はありませんでした。
ここ数年プラスチックの開発によって強度性のあるプラスチックやファイバーコアが世界に普及されるようになったり、接着技術が進歩しました。
アメリカの根管治療(歯の神経の治療)の学会では従来のようなポスト形成(土台のために歯を深く削ること)が歯の寿命を考えた時に歯が割れてしまう傾向へ働いてしまう。
という研究データがあります。
またメタルコアが歯にとってマイナスであることも明らかになってきてます。
金属の土台が危ないわけはこちら
築造処置はアメリカ、ヨーロッパを中心に直接法へと向いてきています。
直接法では歯を無駄に削ることもなく、また歯と同程度の強度があるプラスチックを現在の接着技術でつけることでまさしく歯と同質物のものが歯を補強してくれます。
間接法では歯を多く削るだけでなくセメントスペース(セメントのための余白)を作らなければなりません。それによりその歯が受ける応力によっては二次カリエスのリスクが起こります。
土台建て(築造処置)のタイミング
それでは土台建てのタイミングはいつ行わないといけないのでしょうか。
実は根管充填が終わったら可及的に早く行わなければいけないのです。
アメリカの根管治療専門医では根管充填後、すぐに土台建て(築造処置)を行います。つまり築造処置そのものが根管治療の分野として認識されています。
なぜ可及的速やかに土台建てを行わなければいけないかというと、根管治療後の再感染が次のキーワードになります。
土台を早く建てないといけないわけ
根管充填をラバーダムなどのよって無菌的に行っていても仮の詰め物で封鎖したり仮歯をつけているだけでは完全とは言えません。根管充填した直後から少しずつですが根管内に汚染物が侵入してくることは確かです。
根管充填だけでは完全に封鎖できているわけではなく、歯の構造上、側枝と呼ばれる見えない神経の枝が感染経路になってしまいます。
再感染経路、側枝の分布
側枝とは歯の根(神経の通路)の部分から枝分かれした細い、微小な神経の通路です。
側枝は歯のいろいろなところから派生しています。
①主に神経の根尖部(先っぽ)に多く存在していてヒゲのように点在しています。
②次に分布として歯の根の中央部から歯冠にかけてたくさん点在します。
③実は歯冠部(歯の頭の部分)にも側枝が多く存在しています。
これが根管治療後にそのままにしてはいけない理由です。
根管充填後にしばらくそのままにしておくと仮詰めの周囲から汚染物が流入し、歯冠部へ入っていきます。歯冠の内部へ入った唾液や汚染物が側枝を介して再感染する可能性があります。
そのため根管治療を行った後に可及的速やかに土台建て(築造処置)をして完全に感染物の侵入を防ぐ必要があります。
まとめ
神経の治療後、そのままにしておくとせっかく行った神経の治療が感染してしまい、再治療が必要になる可能性があります。
極力、神経の薬を詰め終わったら(根管充填後)速やかに土台建てを行いましょう。
また土台建ては直接法をお勧めします。なるべく根管内の歯質をこれ以上多く削ることを避け、歯と同等の素材を現在開発された接着技術で接着しましょう。
土台はなるべくファイバーコアがいいですが、厚い歯質が多く残っている歯ならばプラスチックコアでもまかなえます。
もしご自身の歯の神経の治療が終わっているのならば、早く土台を作ってもらいましょうね。
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