巣鴨の歯医者「ヴェリ歯科クリニック」が発信する歯の知識

神経の治療後に歯をたくさん削って被せ物にはしたくない方へ

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こんにちは、ヴェリ歯科クリニック院長の田島です。

 

歯の治療で神経の治療を経験された方に一読していただければと思います。

神経の治療が終わると、『では土台を立てた後に被せ物にしましょう。』と言われます。

まだたくさん歯があったのに治療が終わるとすごく小さくなってしまい悲しい思いをされた経験ありませんか。

そもそも何で神経を取ったら被せ物にするんでしょうか。詰め物ではまずいのでしょうか。

この答えに今回はお答えいたします。

神経の治療後に被せ物が必要なわけ

神経の治療が終わると歯が割れやすく、感染物の侵入を防止するため歯の内部に土台建てを行います。土台を建てた後に普通は歯を削り被せ物の型取りを行います。

しかし「被せ物ではなく詰め物にしてはいけないのでしょうか。』とのご質問をよく聞きます。

答えは場合によっては詰め物もできると思います。しかし被せ物の方がメリットがあるとお答えしています。

その理由に下記の二つが挙げられます。

①細菌が侵入するリスク

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歯の神経を取った後に歯に詰め物をした場合、詰め物と残っている歯の間に細菌が侵入するリスクがあります。一度侵入した細菌は根管治療材の隙間に入りこみ神経の二次感染、および侵入したところから放射状に拡散していきます。

この感染は虫歯になり歯の根の奥深くまで進行します。

通常神経があるときの虫歯の進行では歯が痛みや違和感としてシグナルを発してくれるのですが、神経がない歯に虫歯が進行してしまうとエンドレスで虫歯は侵食していきます。

患者様は痛みが感じないのであるとき突然歯が欠けてしまいやっと気づきます。

歯が欠ける範囲が治療可能な状況なら歯を残せますが、欠けた範囲が大きいと歯を抜歯しないといけない場合もあるのです。

歯をあまり削りたくないために詰め物にしたのに抜歯になってしまったら本末転倒ですよね。

②歯が割れてしまうリスク

神経の治療後に被せ物ではなく詰め物にした場合、詰め物が歯に対して楔のような働きをしてしまいます。

楔は歯に加わるダメージが強いと歯が割れる方向に働きます。

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今から20年前以前、歯の内部を深く削り、ポストアンレーと呼ばれる土台と被せ物、詰め物が一体型の補綴物が世に出回った時期がありましたが、ポストアンレーの大部分は歯を破折する結果に終わりました。

ポストアンレーや詰め物は内側性保持の補綴物と言われ、被せ物などのクラウンは外側性保持の補綴物と言われます。

被せ物にすることで歯に加わる負荷が被せ物の周囲に伝わり歯を割れにくさせ負荷を受け止めます。

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内側性保持の詰め物では歯を割らないよう注意が必要です。

③歯が変色してしまうリスク

女性お笑いコンビの『ハリセンボン』の箕輪はるかさん、ご存知ですか。

以前の彼女は『神経が通ってないので歯の色が着色しています。』でよく話題になっていましたよね。

歯の神経を取ると歯は次第に変色して褐色になっていきます。

その結果審美的に悪くなります。特に前歯の治療では神経を取るとプラスチックで穴を補填していましたが経年的に褐色じみてきます。

褐色になる前に被せ物に変更することをお勧めします。

被せ物をした方が良いという臨床研究

歯の神経を取ると歯がもろくなると言われていますが、実際は神経の有無なしでは強度に変化はありませんでした。

しかし歯の神経を取るためには歯の中央部を空洞化させ、根の神経の通路もある程度拡大しなければなりません。

歯の内部がどんどん空洞になることで歯が割れるリスクが増えます。

神経の治療をした歯を8年間調べ、そのうち抜歯に至った歯をリサーチした結果、抜歯に至った歯の85%の歯が神経の治療後に詰め物で対応した歯でした。

このことから神経の治療後に詰め物ではなく被せ物で対応した方がいいことがわかります。

神経の治療後に被せではなく詰め物にして問題がない場合

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しかし神経の治療後に詰め物で対応する場合もあります。

①神経の治療をした歯の厚みが十分が多く(残存歯質)強度的に問題ない場合

神経の治療をした歯の、残った歯の厚みを残存歯質と呼びます。

残存歯質が十分あり、咬合力がそこまで歯に負荷が加わらなければ治療した歯を被せ物にしなくてもいい場合があります。

②神経の治療が10代でまだ歯をあまり削りたくない場合

虫歯を治療してやむなく神経の治療をした方が10代である場合、今後神経の治療をした場所がトラブルになった際、これ以上に歯をたくさん削らなければならなくなります。

歯は、たくさん削らないに越したことはありません。

10代の場合、神経の治療をしたところが負荷が加わらない場合はそのまま被せ物ではなく、詰め物にする場合もあります。

詰め物はだいたいレジン(歯科用プラスチック)治療が主流です。

③奥歯の歯でもしっかり噛んでいない親知らずなどの咬合力があまり働かないところ

奥歯の歯には100kgほどの咬合力が常にかかっています。

神経の治療をした歯が不十分な強度のものでつけられると、補綴物自体が損傷するか、歯に影響が出るかのどちらかになります。

しかし奥歯でも、親知らずなどのあまり咬合力のかからないところ、歯自体が噛み合わせとして機能していないところは詰め物で対処しても割れるなどのリスクはありません。

まとめ

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歯の神経の治療をした後にたくさん削られて歯が小さくなることを喜ぶ患者様は一人もいません。

しかしそのあとの被せ物をしっかり対処してつければ審美性、および強度が補強でき、歯の寿命も伸ばすことができます。

最近では強度性のあるプラスチックの開発もあるので、神経の治療、虫歯の範囲が小さければプラスチック充填でもまかなえると思います。

強度を考えた長期予後となるべく削りたくないという患者様の意思を尊重して適した方法で治療が行われればと思います。

神経の治療をした歯で、被せ物はしたくないが詰め物で治療が可能なのか?など、不安がありましたら歯医者さんで相談しましょう。

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