こんにちは、巣鴨ヴェリ歯科クリニックの田島です。
せっかく作った差し歯が外れてしまったり、差し歯の周りが歯周病や虫歯になってしまったり。
最悪なケースでは歯が折れてしまったりと。
前歯の差し歯には以外と知られていない設計があるんです。
せっかく差し歯を作るのであれば知っておきたい作業のことをまとめてみました。
前歯の角度
『私は女優の石原さとみさん見たく前歯を中に入れるようにしてください。』
「私の前歯は出っ歯のようにしないでください。』
前歯の差し歯を作る時、審美治療であればなおさらの事、綺麗な前歯を作ってもらいたいですよね。
しかし前歯の角度のことを知っていないと後々大変なアクシデントが起こってしまうのです。
つまり人間が前に顎を動かした時、下の歯と上の歯が強すぎず当たらなすぎず程よい接触で当たる関係がいいと言われています。
そのためには人間の前に顎を動かした時の角度などを知る必要があるのです。
矢状前方課路角と切歯路角
矢状前方課路角と切歯路角、なんだか難しそうな言葉ですが、簡単に説明すると前歯を『アイーン』と前に突き出した時に開く顎の関節の角度のことを矢状前方課路角。
前にアイーンと出した時に上前歯と下前歯が擦れ合って離れる角度を矢状前方切歯路角と言います。
矢状前方課路角
顎を前に出した時に少なからず顎は開きます。
この開いた時の角度を横側から見た時のことを矢状（横側から）前方（前に動かした時）課路角（顎が動いた時の角度）と言います。
歯がたくさんある人、歯が全くない人、乳児、など年齢によって大きく角度に違いがあります。歯がある人の方が角度は大きく、歯がない人や赤ちゃんは角度が小さい傾向です。
また同一の人でも左右の誤差もあります。
日本人では平均３３°というデータがありますが５°の人もいるし５５°の人もいるので人によって大きく誤差があることは確かです。
矢状前方課路角の研究は１９２０年代のGysi先生によって広く伝わりました。
切歯路角
切歯路角とは歯を前に出した時の上下前歯が当たりどれくらい離れるか。
横側から見て水平的に何度開くかを表します。
この角度は上下の前歯の形や上下前歯の歯の傾きによって数値は左右されます。
Gysi先生によると４０〜８０°の中で平均６０°と唱えていますが、かなり振り幅が大きいことが読み取れます。
つまり切歯路角は上下前歯の当たり方によって影響があるのです。
ここで本題に戻ると、前歯の角度はどう作る？
前歯の角度はいい加減であってはいけません。調和がとれて当たりすぎず適度に当たるくらいがいいです。そのためには切歯路角を理解していないといけません。
前歯の切歯路角はどう作るのでしょう。
答えは仮歯を使って調和させるのです。
カスタムインサイザルテーブルとチェックバイト法
前歯の差し歯を作る時にいくらきれいであってもしっかりした前歯の噛み合わせができていなくてはなりません。
この前歯の噛み合わせをアンテリアガイダンスと言います。
調和のとれたアンテリアガイダンスを仮歯で作った後の手順を説明します。
①前歯の仮歯を修正して調和のとれたアンテリアガイダンスを作ります。（レジン修正）
②調和がとれた仮歯の外形を読み取ります。（型取り）
③顎を前に出した時と噛んだ時の噛み合わせの記録をとります。（チェックバイト）
④半調節性咬合器に歯型模型をつけます。
⑤チェックバイトを使って矢状前方課路角の設定をする
⑥カスタムインサイザルテーブルを作って前歯の運動路を事前に察知
⑦これらを参考に前歯の差し歯を製作
カスタムインサイザルテーブルは切歯板と言われる咬合器の前方皿にレジンを流し込んで作ります。
咬合器によっては切歯路角度を自由に設定できる切歯路指導板と呼ばれるものがありますが直線的な軌跡しか描けないのが難点です。
カスタムインサイザルテーブルを使っていないとどうなる？
すべての前歯の差し歯で必要なわけではありませんが、噛み合わせを考えていかなければなりません。
例えばカスタムインサイザルテーブルなしで前歯の差し歯を作った場合、正確な前歯の噛み合わせ関係、アンテリアガイダンスを作ることができません。
前歯に過剰な負担を担ってしまう場合があります。
まとめ
人間の顎の動きを網羅しながら差し歯をつくることが簡単ではないことがお分かりでしょう。
私たち歯医者さんは見えない前歯の裏側でも、重要な噛み合わせの箇所として考え差し歯の設計をします。
Gysi先生やGuichet先生などの偉人たちが考えられた矢状前方課路角と切歯路角。
前歯を作るために知っておきたいカスタムインサイザルテーブルについて少しご理解いただけたでしょうか。
