こんにちは、ヴェリ歯科クリニック院長の田島です。
ジルコニアクラウンをご存知でしょうか。現在世の中で出回っている被せ物の中で天然の歯のような色調が再現でき、さらに強度を兼ね備えた被せ物です。
人工ダイアモンドのジルコニアを歯科用にアレンジした被せ物です。
『ジルコニアってダイアモンドみたいに硬いと対合(噛み合う)歯が割れたり欠けたりしちゃうんじゃないの?』とよく質問されます。
ジルコニアの硬さ、種類、どんな治療でお勧めかを今回は説明したいと思います。
目次
ジルコニアクラウン
ジルコニアは日本の企業、東ソー社が開発した素材です。
ジルコニア金属元素Zrを酸化させ、酸化ジルコニウムZrO2を主成分にしています。
ジルコニアは歯科用金属だけでなく、耐熱性の金属なので、ロケットの材料、人工股関節、テレビなどの精密機器、光ファイバー技術など幅広い分野で使われている材料です。
歯科用に開発されたのは2005年くらいからでそれまでのオールセラミックにかわる材料として発売されました。
現在、ヨーロッパ、アメリカだけでなく、全世界でジルコニアクラウンは普及され、世界の補綴物(被せ物)の一番のシェアがあると言えます。
ジルコニアクラウンが今一番いい被せ物であるわけ
①セラミックよりも強度があるので割れにくい
ジルコニアクラウンは強度が高く、600mpaの強さを持ちます。つまりそうやすやすと割れるような素材ではありません。
以前は奥歯などの噛み合わせが強い場所では、セラミックでの治療が難しく、金属の被せ物を余儀なくしていたか、セラミックで治療しても後々セラミックが破折することがありました。
ジルコニアが登場してから、特に奥歯に白い被せ物を希望される患者様にとっては非常に喜ばれています。
②プラークが付着しにくい
ジルコニアは超高密度の原子が配列している非常に高度のある素材です。それにより、プラークなどの汚れが付着しにくいです。
プラスチックやレジンには着色や、汚れなどを吸着してしまう弱点があり、白い詰め物や、被せ物をしても経年的に色が付いてきますが、ジルコニアには着色や、汚れが付着しないのでそのまま永続的に白いままです。
③透明度が高いので天然の歯に近い色も再現できる
2005年頃より市場に出たジルコニアはまるで陶器のような白さで被せ物治療では天然の歯のような色を再現することが不可能でした。
そのためジルコニアの上にセラミックをつけた、ジルコニアレイヤードセラミッククラウンが主流でした。
2012年頃より高透過性ジルコニアの開発が進み、天然の歯に近い色の全てジルコニア性の被せ物が開発されたことで奥歯にも透明度が高く、割れない被せ物が実現できました。
強度も強く、透明感もあるので非常に多くの国々で普及されています。
④歯科用3Dプリンター(CAD/CAM)で製作するのでデータとして残る
ジルコニアクラウンはCAD/CAMデータによってコンピュータ上で製作されます。
歯の型取りをした後に歯科技工所で歯型をスキャンしコンピュータ上でデザイン、そして製作されます。
コンピュータのデータが保存されている限り、例えば被せ物がなんらかのトラブルでもう一度作らないといけなくなった時や、被せ物を破損、無くされたときなど、全く同じジルコニアクラウンを製作することができます。
⑤体に優しいので金属アレルギーにも対応
従来の金属の上にセラミックがある被せ物(メタルボンドクラウン、PFMクラウンとも呼びます。)では金属の裏打ちがあるせいで歯茎のキワ部分に黒いラインが出たり、歯茎が黒ずむことが多々ありました。
これは金属内部にある金属イオンが歯茎へ溶出してしまったためだと言われます。
ジルコニアクラウンでは内面が酸化ジルコニアで白いままです。金属アレルギーの心配もありませんし、歯茎が黒ずむこともありません。
Q『強度があるのはわかったのだけど、そんなに強度があると噛み合う歯は大丈夫なの?』
A ジルコニアによって対合の歯に影響が出ることはありません。
よくこのような質問を受けます。
私はジルコニアが発売された2005年当初からジルコニアで治療していますが、実際にジルコニアで対合にダメージが加わってトラブル(歯が欠けたり、すり減ったり)が出た方はいませんでした。
なぜ強度があるのに対合の歯に影響が出ないのでしょう。
それはジルコニアの密度が関係します。
(ジルコニアの表面電子顕微鏡)
ジルコニア表面はつるつると滑沢で塑像な粗い面はありません。これはジルコニア元素が0.2〜1μm粒子が規則的に密になっていることで強固な金属であることを表しています。
しかしある環境でジルコニアによって対合の歯が削れたり、影響が出る場合があります。
ジルコニアによって対合の歯が傷つくケース
ジルコニアクラウンの表面がザラつくとすぐ対合に影響が出ます。ざらついた表面に対合の歯が当たり磨耗してしまう可能性があります。
この表面が粗くなる原因としてジルコニアクラウンの噛み合わせ調整の際、研磨工程を不十分にしてしまうことでこのようなことが起きます。
つまりジルコニアクラウンで調整した後は必ず研磨工程を重視しなければならないということです。
スイスのチューリッヒ大学の研究ではジルコニアの研磨面とそれが対合歯に影響を与えないかの研究をされています。
また噛み合わせ調整の際にジルコニアクラウンの場所のみが強く当たってしまう場合はジルコニアクラウンやその対合歯にダメージが出ます。この場合はバランスのとれた均一な噛み合わせにしなければなりません。
まとめ
ジルコニアクラウンは今後透明性がさらに進化していき、近い将来セラミックに置き換わる素材になるでしょう。
現在奥歯(小臼歯、大臼歯)に使われるフルジルコニアは透明度が高く天然に近い歯を作れますが、前歯などの審美的な部分に関してはセラミックを築層しています。
今後奥歯だけでなく、前歯の被せ物でも全てジルコニアでできる技術が可能になると思われます。
このブログを拝読されている方には是非ジルコニアの強度と審美性について知っていただければ幸いと思います。ジルコニアの強度が強いからといって対合の歯が削れるという心配はありません。
治療の際、被せ物を選択する時にジルコニアクラウンの知識があると便利です。ぜひ歯科医院に行って相談しましょう。
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