こんにちは、ヴェリ歯科クリニック院長の田島です。
私たちが普段無意識で行なっている飲み込む動作、嚥下運動について今回はお話しします。
嚥下運動ってなに?や、正しい嚥下運動のことについて記したいと思います。正しい嚥下運動を理解しないと噛み合わせが変わってくる可能性もありますので要注意です。
嚥下運動とは
物を噛み、唾液とともに食塊になったものを飲み込み、食道を通って胃に運ぶ行為を嚥下運動と言います。
私たちは1日に600から2000回ほど嚥下運動をしていると言われています。
嚥下運動は食べ物が口の中にないときにでも行っています。
私たちが摂食行為(食べ物を食べる)をするとき、まずものを識別しその後咀嚼運動を行います。
食べ物を細かくして嚥下しやすくします。消化液の分泌を促し、唾液と食塊をよくなじませます。
その後嚥下運動を行います。
嚥下運動はその過程から3つの段階に分かれそれぞれ口腔期、咽頭期、食道期に分類されます。
口腔期(第一相)
ものを噛み込み、ある程度喉に通るように細かく砕きその後、唾液とともに砕いた食塊を口腔から咽頭に送る時期を口腔期(第1相)と言います。
第1相経過中は口の中が陰圧になり口の中の内圧が20mHgになります。また第1相では舌骨が上がり下の顎の筋肉(顎二腹筋や顎舌骨筋)が活動します。
唇が閉じて舌によって食塊が奥の方に押されていきます。この行為は随意運動と言って、私たちの意識のもとで行える運動です。これ以降は不随運動と言い我々の意識下では行えない運動になります。
この時期、顎舌骨筋の働きは非常に重要な役割をしているので顎舌骨筋に異常がある方はうまく嚥下運動ができない可能性があります。
咽頭期(第二相)
第二相は咽頭に運ばれてきた食塊を食道へ移行させる時期です。
軟口蓋が持ち上がって食塊が鼻腔に移動するのをふさぎます。また喉頭蓋が下がり食塊が喉頭部(気管があるところ)へ移動するのをふさぎます。
一時的に呼吸が止まりますが脳のコントロール下で行われます。舌骨は前上方向に持ち上がり、喉頭も上がります。
食道口が広がり食塊を鼻腔や気管へ行くのを防ぎ、食道へ移行するように促します。
食道期(第三相)
食塊が食道入口部を通ると蠕動運動によって食道内部へ送られます。その後食道入り口の輪状咽頭筋が活動し、食塊が逆流しないように閉鎖します。喉頭や喉頭蓋、軟口蓋は活動を辞め、元の位置に戻ります。
蠕動運動がうまく働かない時や、胃と食道の境界にある筋肉が完全に閉鎖しない時、食塊が逆流する場合があります。
逆流することで誤嚥して肺炎になるリスクもあります。また胃酸によって歯を痛めてしまう可能性もあります。
正しい嚥下運動をしてないとどうなる?
正しい嚥下ができないことを嚥下障害と言います。嚥下障害で主に起こることがこちらになります。
- 誤嚥(食物が気管に入り込んで肺組織に感染し肺炎などを起こす病気です。老人の方や、うまく嚥下ができない方などに見られます。)
- 栄養不良、脱水
- 食生活の意識が低下
歯科で見られる嚥下がうまくできない原因は?
①舌炎、アフタ
②口腔腫瘍、咽頭膿瘍
③扁桃腺炎
④口腔手術の術後
⑤虫歯で歯が少なくなり咀嚼力が低下したことによるもの
⑥口腔、咽頭の嚥下力の低下(顎舌骨筋など)
⑦粘膜、知覚の低下(老化)
⑧唾液の性質が変わったり分泌量が少なくなる
などが挙げられます。正しい嚥下の前にお口の中に虫歯でたくさん歯がなくなっていないか、口の中の唾液の量、性質、また顎の筋肉、特に下顎の下にある筋肉群を診査して総合的に診断しなければなりません。
また嚥下障害が食道付近の病変から起きているものや扁桃腺が腫れていたり、脳血管障害があったり、うつ病やその他歯科以外の病気から起こることも多いので十分診査し、専門の医科と連携して治療を行います。
正しい嚥下をしてみよう
嚥下運動するときは上下の歯を軽く摂食させます。まずは軽く摂食させて嚥下してみましょう。
鼻から息を吸い口をすぼめていきを吐く練習をしましょう。
息を吸って止め、嚥下運動をし、息を吐く を繰り返す練習をしましょう。
口を膨らませたりすぼめたりする練習をします。
舌を左右に5回ずつレロレロして口角を触ってください。
軽く深呼吸して空嚥下をします。
まとめ
正しい嚥下ができていないと誤嚥性肺炎などの重い感染症になることもあります。また歯科領域では舌を出しながら嚥下をする患者様をよく見かけます。
舌を出すことで口呼吸になりやすく、歯並びに影響も出てきます。
口呼吸になると、虫歯や歯周病になりやすい環境になるので、そのような方は正しい嚥下運動を知っていきましょう。
虫歯によって歯がたくさんない方、咀嚼効率が下がり嚥下がうまくできない可能性があります。嚥下や咀嚼運動は人が生きていく上で必要な行動ですので、虫歯を治して歯を入れていきましょう。
唾液が少ない方はうまく食塊と唾液がなじまずに嚥下してしまう恐れがあります。その結果誤嚥になる可能性があります。
唾液を促すマッサージや唾液促進ジェルなどを使って唾液を多く出しましょう。
嚥下に対して不安な方は一度歯科医院でチェックしてもらいましょう。
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