巣鴨の歯医者「ヴェリ歯科クリニック」が発信する歯の知識

減り続ける歯科技工士。未来の歯科治療で起こる問題とは?

歯科平行模型

こんにちはヴェリ歯科クリニックです。歯科医院で虫歯の治療をすると型取りをして数日後に詰め物を入れますよね?

歯医者さんで型取りをしたものを模型にして詰め物を作る職人さんを歯科技工士と呼びます。

日本では国家資格で歯科技工専門学校を卒業した方がなれる職業です。

しかし現在、歯科技工士という職業自体なくなりつつあるという危うい状況なんです。

今回は歯科技工士についての個人的な見解をお話しします。

減り続ける歯科技工士

年々歯科技工士さんは少なくなっているらしいです。私が以前勤めていた取引先の歯科技工所さんも大正時代から開校された有名な歯科技工専門学校でしたが、来年2019年3月をもって廃校になるようです。

なぜ歯科技工士さんは少なくなっているのでしょう?

歯科技工士学校の閉鎖と入学者減少

全国で多くの歯科技工学校が廃校になっています。現在日本全国で年度の卒業生が800人にも満たないようです。(2018年)

また新規に歯科技工士学生を募集しても出願する学生も減っているようです。

増え続ける歯科技工業界からの離職者

卒業後就職先の歯科技工所で就労することになりますが、詰め物や差し歯を作る作業は朝早く夜遅いのが日常です。低賃金、長時間労働が現代の社会とマッチせず多くの新卒者が1年以内でやめてしまいます。

また新卒者だけでなく卒後数年後に転職される方も多いようです。

診療報酬マイナス算定からより低価格なものを求める歯科医院

歯医者さんで治療を受け、差し歯や詰め物を作る時の診療代金はあらかじめ厚生労働省が決めた保険点数により請求されます。

つまり保険点数という上限の中で歯科医院の利益、材料代、金属代、歯科技工料金がまかなわれます。

年々診療点数はマイナス査定されており、また金属の高騰も相まって歯科技工料金を下げてほしい歯科医院が多いのが現状です。

より低価格な歯科技工を求められると歯科技工士さん達の経済面や労働面が二重苦になります。安い値段で長時間働かざるえません。

3Dプリンターで歯科技工を作る時代

歯科界では数年前から新しい技術が取り入れられています。歯の型取りをせずに口腔内スキャナーで歯を読み取りそのまま詰め物や差し歯を作るというシステムです。

アメリカではほぼ100%の歯科医院が口腔内スキャナーを保有しているのが現状です。

スキャニングしたデータはそのままパソコン上で反映され専用のソフトで差し歯や詰め物のデザインをしてミリングマシンという歯科用3Dプリンターで削り出します。

今まで委託していた歯科技工士さんは必要とせず医院で差し歯や詰め物を製作できます。こういったことも歯科技工士の需要を下げている原因の一つです。

未来の歯科治療で起こる問題

では歯科技工士さんが今の1/10まで減った場合を仮定して歯科治療で起こる問題をシュミレーションしてみましょう。何年後のことでしょうか?以外に近い未来かもしれませんよ。

口腔内スキャナーで作る差し歯、実は隙間だらけ

この時代、日本の歯科医院でも口腔内スキャナーの普及が多くなっています。しかし口腔内スキャナーに慣れていない歯科医師が多いでしょう。その結果差し歯のデザインに欠陥があり合わない詰め物が多くできます。

またミリングマシンに搭載される切削器具(ブロックを削り出して差し歯を作るドリル)はサイズに限度があり繊細な場所は届きません。

繊細な部分は歯科技工士さんの修正が必要になりますが、いない場合やはり問題が多く出てきます。

歯科技工は全て中国や海外へ委託、日本は一ヶ月待ち

歯科技工料金を少しでも低価格なものにするため海外への外部委託がメインになります。その結果技術にムラがあったり、再作製を余儀なくさせられます。

技術の高い日本の歯科技工所は人気があり作製期間にその分期間がかかります。

技術力のある歯科技工士は重宝されるアメリカへ移住

日本の歯科技工士は手先がよく繊細で細かい所までも忠実に差し歯を製作してくれると海外からの評価も高いです。

実際日本の歯科技工士でアメリカに移住され活躍されている方も多いです。

アメリカや中国は歯科技工士と呼ばれる国家資格がないので素人の人が鍛錬をして差し歯を作ります。

日本の歯科技工士はあらかじめ国家資格として教育を受けます。ある程度の技術があるのは海外に行っても重宝される要因の一つではないでしょうか。

まとめ

未来の歯科治療で起こる問題はあくまで私の個人的な意見ですが、歯科技工士さんが少なくなることは確かです。そして何らかの影響が出てくるでしょう。

口腔内スキャナーが到来する時代でも歯科技工士さんの技術は必要です。

全ての症例で口腔内スキャナーが適用できることはないからです。

歯科治療は歯科医師と歯科技工士と患者さんが一つのゴールを目指して進むことが治療の合否を分けます。歯科医師にとって歯科技工士は必要不可欠な存在なのです。

歯科技工士さんに明るい未来が来ることを願います。