こんにちは、ヴェリ歯科クリニック院長の田島です。
歯茎が歯周病でやせ細ったり、下がってしまうと、歯が長く見えたり、歯と歯の間に隙間ができてしまいます。
それとは逆に、なかったはずの歯茎が蘇ったかのように増えることがあるのです。
このことをクリーピングと呼びます。
今回はクリーピングの不思議についてお話ししたいと思います。
歯茎の隙間がなくなる『クリーピング』の不思議
クリーピングとは歯科治療で歯茎を削ったり下げたりしていてもその下地の骨がある限り歯肉は回復してあたかも歯茎が蘇ったかのようになることを言います。
上の図は真ん中の上前歯二本を被せ物で装着した当日の写真です。前歯の歯と歯の間に若干ですが隙間が空いているのがわかりますでしょうか。
これが拡大図です。
実はこの空いている歯茎が数週間を経て増えてきてこの隙間を埋めるのです。
こちらが被せ物を装着してから3週間後の写真です。
歯茎が馴染んでいるのがわかりますでしょうか。
装着当日に歯と歯の間に空いていた隙間がふさがっているのがわかりますか。
歯茎が図のように回復することをクリーピングと呼びます。
では一体なぜ図のように歯茎が回復するのでしょうか。またすべての歯でこのようなことが起きるのでしょうか。
クリーピングの不思議について紐解きたいと思います。
歯茎の隙間がなくなる理由
クリーピングは歯茎の回復が主体ですが、回復する正体は下地である骨に由来するのです。
歯茎のある場所には必ず組織の下に骨が存在します。骨がなくならない限り歯肉は回復します。歯茎が骨からどれくらいの位置にあるのか。また歯茎、骨と歯はどんな位置にあるのか。
つまり歯と骨と歯茎の位置関係を知らなければなりません。
生物学的副径(biologic width)
歯と歯茎と骨の位置関係はこの図のようになっています。
この図は歯の生え際を拡大した図で歯肉の先端、歯肉縁から約1mmずつの単位で組織の幅が分けられています。
①歯肉縁から歯肉溝まで1mm
歯肉縁から歯肉溝と言われる歯肉の最深点までの距離はだいたい1mmと言われています。
②歯肉溝から結合組織の層まで(上皮付着の層)1mm
歯肉の最深点から1mm下までは歯肉と歯がくっついているそうになります。歯肉の一番上の組織を歯肉上皮とよばれ、この上皮と歯がくっついている層です。
上皮性付着とも呼ばれています。
③結合組織の層から歯槽骨まで(結合組織の層)1mm
上皮性付着から骨までの1mmは歯肉上皮ではなく完全に歯肉と歯が一体になってくっついている層になります。
結合組織とよばれ、この環境下で骨の細胞が活動されていきます。つまり歯を支える歯槽骨は結合組織の環境下でないと存在しません。
以上のことから健康な歯肉を持っている方の歯肉は歯槽骨から約3mm直上に歯肉が存在すると言えます。
歯、歯肉、骨の位置関係は生物学的副径と呼ばれて、歯の萌える時期や、年齢、性別に関係なく常にこの原則が当てはまり普遍なのです。
1962年、ペンシルバニア大学のDr Cohenによって唱えられたものです。
生物学的副径、なんとなくですがわかっていただけたでしょうか。
『なんとなく骨から立ち上がる歯茎の関係はわかったけど、歯と歯の間の歯肉はどれくらいで再生できるの?』
歯と歯の間の歯茎が自然に再生する
Dentogingival complex
デントジンジバルコンプレックスとは、先程の生物学的副径の続きで、歯と歯の間の歯茎はどれくらいまで回復するのかを知るための指標です。
健康な歯肉が存在する方で歯と歯の間の歯肉は骨頂(歯槽骨のあるところ)から約5mmの歯肉が回復します。
もちろん歯周病などで骨を失われている方はこのようにはなりません。
被せ物や詰め物を作る時の注意点
5mmほどの歯肉が回復するのを予想して被せ物のコンタクト(接触部)を作らなければなりません。もしコンタクトを歯肉側に近いところに設定した場合、回復した歯肉がコンタクト部に陥入してしまい、清掃性が悪くなります。
結果、歯肉炎の原因にもなってしまいます。
歯茎の隙間をなくす4つの治療法
歯と歯の間が5mmしっかり回復して隙間が治った方はいいのですが、歯周病や元々の歯の位置によって隙間が生じた方もいます。そんな隙間がある方に4つの治療法をご紹介します。
被せ物と歯の間に隙間があると物が挟まりやすく歯肉に悪影響が出ます。また生じた隙間は滑舌や見た目上の問題もありますよね。
差し歯を作る時の治療法
①被せ物の設計をロングコンタクト、スクエアタイプの被せ物へ
被せ物の設計を変えることで隙間を埋めることができます。例えば歯と歯のコンタクトの場所を歯肉側に近づけることで隙間が埋まりやすくなります。
また被せ物にはオベイド(卵形)テーパード(逆三角)スクエア(四角)などの形がありますがスクエア型は比較的隙間を埋めるような歯の形をしています。
②歯肉を移植したり、増大するための治療をする。
歯茎を隙間がある場所や、隙間が生じた部分の歯肉の箇所に歯肉を移植する方法です。
採取する歯肉は上顎の裏側奥にある比較的暑い歯肉がある部分であったり、下の親知らずの方にある厚い部分です。
③ヒアルロン酸の注射
隙間がある場所にヒアルロン酸を注射することで、歯肉にある細胞を活性化させて歯肉の増殖を期待した方法です。
一回だけでなく数回の注射が必要になることと、ヒアルロン酸の存続期間があり一年後に再度注射が必要です。
④矯正で引っ張る治療(挺出)
歯を移動させるとそれに伴って骨が作られます。これを利用した治療法です。
歯を牽引することで骨の位置が上がります。上がった骨の位置に歯茎が乗っかります。
つまり相対的に見ると、矯正治療によって隙間があった歯茎が増殖したかのようになります。
まとめ
被せ物を作る際に回復する歯肉をコントロールしたり予知しなければいけません。
そのためには仮歯の段階でコントロールします。自費治療ではプロビショナルレストレーション(仮歯)を使って歯肉をマネージメントできます。
結果、歯肉に調和のとれた被せ物を製作することが可能です。
今回はクリーピングについてお話ししましたが少し難しい内容でしたので理解いただけましたでしょうか。
簡単に言うと骨がしっかりた裏打ちをしていれば歯茎は回復しますよということです。
→差し歯を作る時に歯茎が下がってしまった方、無料メール相談承っております。
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