巣鴨の歯医者「ヴェリ歯科クリニック」が発信する歯の知識

『私は骨がなくてインプラントができない?』その理由とは。骨を拡大してインプラント治療の応用について

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こんにちは、巣鴨ヴェリ歯科クリニックの田島です。

インプラントをするための骨がなくなってしまった方へ

前回は骨の幅を増やすスプリットキャスト法、リッジエキスパンジョンについてお話しいたしました。

骨の幅を増やす方法についてはこちら

歯がなくなった後、顎の骨は様々な影響でなくなっていきます。

しかし、なぜインプラント治療ができなくなるほど骨の幅、骨の量がなくなってしまうのでしょう。

患者さんによって様々な原因がありますが、今回はその点を掘り下げてお話しいたします。

なぜインプラントをするための骨がなくなってしまった?

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インプラントをするための骨がなくなってしまい、残念ながらインプラント治療ができなくなってしまった方へ。

そもそもなんで骨がなくなってしまったのでしょうか。後天的な原因、先天的な原因、また解剖学的な原因について理由が分かれます。

①昔歯を抜いた後長年放置していた

人間の顎骨は一度抜歯をするとどんどん骨がなくなっていきます。1年前に抜歯した場所と10年前に抜歯した場所を比較すると大きく骨がなくなってしまうことがわかります。

数十年前に抜歯した場所を見ると骨の密度は厚くなります。骨が硬くなるということです。

それに従い骨の幅は小さくなります。

抜歯をした後に上の顎で6か月、下の顎で3か月ほどで抜歯した骨や歯肉の状態が安定します。

歯肉や歯槽骨が安定する頃にインプラント治療をされることが安全と言われています。

抜歯後長年放置してその後インプラント治療を考えている方。

いざインプラント治療を行うときには骨の量がなくなっていたなんてこともあり得るのです。

②重度の歯槽膿漏や、根の病気などで骨が大きく溶けてしまった

数十年前の歯科治療の話をします。

昔は残せそうな歯でも抜歯をして総入れ歯を作っていたそうです。

これだけ解釈するとなんて暴力的な治療なんだ!

などと感じるかもしれませんが、案外そうでもないのです。

歯がダメになりつつある時期に先手を打って抜歯をすることで、骨にダメージが残らなくなります。

するとしっかりした骨が確保できるのです。

この残った骨は入れ歯を維持するための大事な土手の役目をするため、

入れ歯が外れにくく適合の良い入れ歯が作れます。

現在の歯科治療の流れは抜歯を長引かせ、なるべくダメになるまで歯を残す治療が主流になりました。

歯を抜歯せずに残せる治療が多くなってきたのです。

しかしこのように歯を限界まで残す治療には大きな欠点があります。

病気の歯の周囲の骨がたくさん失われてしまうのです。

たくさん失われた骨の影響は後のインプラントや入れ歯の治療で大きく関わります。

インプラントをするための骨がなくなてしまい、骨を作る手術(GBR)が必要になります。

入れ歯を作るための土手がなくなり、入れ歯もガタつきのあるものになってしまいます。

③もともと骨の厚み(横幅)がない場所

歯槽膿漏や根の病気でなくてももともと骨の幅がない場所がお口の中にあります。

上の前歯や下の前歯は骨の幅が極端にありません。

このような場所にインプラント治療をされる場合、直径の細いインプラントを入れるか、骨を作る治療(GBR)を併用してインプラントを行います。

上の前歯のインプラント治療は非常に難しく、抜歯をした後で即時にインプラントを埋入したり、抜歯後1、2か月でインプラントをすることもあります。

これは抜歯をして数ヶ月経ってからインプラントをするよりも抜歯後初期の方が骨の横幅が確保されていることから行うのです。

④もともと骨の厚み(縦幅)がない場所

下の歯の奥歯や上の歯の奥歯あたりは人によって骨の縦の厚みがありません。

上の歯には上顎洞、下の歯には下顎神経という障害物が存在します。

最近では6〜8mmのショートインプラントが販売されていますが、上顎洞や下顎神経との距離が8mm以下の場合、別の方法でインプラント治療を考えなくてはなりません。

インプラント治療で知ってほしい骨の密度

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骨の厚み以外にも骨の骨密度がインプラント治療で影響します。

上の図はDr.Mischの分類で骨の密度を表した図です。

D1は非常に硬い骨です。主に下の前歯の部分にある骨です。

D2はやや硬い骨です。外側に皮質骨という厚い骨、内側に海面骨と呼ばれる柔らかい骨があるのが特徴です。

主に上の前歯、下の歯全体で見られます。

D3はD2よりもやや柔らかく、下の奥歯や上の歯全体の骨が当てはまります。

D4は完全に柔らかい部分です。骨密度が疎でインプラント治療をしても6か月くらい様子を見て差し歯を作ります。

(ちなみに通常の骨であれば平均3か月くらいで差し歯を作ります。)

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DrMischの写真(顎における骨の密度を発表しました。)

骨の拡大でどんなインプラント治療に応用できる?

前回ご紹介したボーンスプレッダーによってインプラント予定の骨を拡大します。

ではどんな時に応用するのでしょうか。下記に挙げます。

①上の前歯の抜歯即時インプラント

インプラント治療でも難しい前歯の治療において応用できます。

抜歯をした後にすぐ抜歯後のセカンドラビアルプレート(抜いた歯の奥側の骨壁)に向けてインプラントを埋入します。

またインプラント埋入した周囲部分には、骨補填材などを入れて骨のバリヤーを作ります。

②上の奥歯の抜歯即時インプラント

上の奥歯、大臼歯は3つの歯根があります。通常抜歯した上の奥歯は6か月ほど骨ができるか様子を見てインプラント治療の相談をします。

だが早期にインプラント治療で噛む喜びを味わいたい方へ。

抜歯した3つの歯根の収束する場所、つまり又の部分に骨は維持されます。

又の部分めがけてインプラントを埋入し、ボーンスプレッダーで骨を拡大させてインプラントを埋入します。

③骨幅が少ない症例

理由はどうあれ骨の幅が少ない箇所はリッジエクスパンジョンやスプリットキャスト法を用いて治療を行います、

まとめ

骨の密度によってインプラント治療ができるかどうかの診断に影響があります。

ボーンスプレッダーは骨の厚みを増やす器具であり、それは脆弱な骨が密度の濃い骨に置き換わ流ことを期待します。

もしご自身の歯が抜歯になってしまうと診断されてしまった場合、骨の密度とインプラントの関係を思い出してくださいね。