巣鴨の歯医者「ヴェリ歯科クリニック」が発信する歯の知識

矯正を失敗しないために。上顎に固定装置パラタルバーを入れる理由

歯の健康,ピンクのハートマーク

こんにちは、巣鴨ヴェリ歯科クリニックの田島です。

パラタルバーとは矯正治療を行っている方で使う装置の種類です。

上顎の両奥歯に装置がつき、その両奥歯から上の顎をまたがって装置がつきます。

パラタルバーって何?パラタルバーは何で必要なのについてまとめました。

パラタルバーって何?

IMG_8432

パラタルバーとは上の図矢印にある両奥歯をつないだ装置のことを言います。

奥から数えて二番目の第一大臼歯と呼ばれる歯にバンドと呼ばれる金属の帯冠を装着させます。

この帯冠にはあらかじめ裏側にパラタルバーが入る受け口を設定させます。

これをシースと言います。両シースの中にパラタルバーを差し込んだら装着完了です。

パラタルバーは上の顎(口蓋)をまたいだ装置です。

パラタルバーはなぜ必要なの?

『なぜこんな異物を口蓋に入れないといけないの?』

『舌で触ると違和感があるし、お口の中が窮屈になってしまうよ。』

なんてご意見ごもっともです。

できたらこんな大きな装置をお口の中に入れたくはないのですが、パラタルバーを入れないと歯が思わぬ方向に移動してしまう恐れがあるのです。

矯正治療をする上で肝心なのは動かしたい歯と動かしたくない歯に分かれることです。

動かしたくない歯と動かしたい歯を知ることで何故パラタルバーがなぜ必要なのか!がわかります。

矯正治療は奥歯対前歯の綱引き

A couple play tug-of-war with rope.

矯正治療を例えると水面でそれぞれ二隻の船に乗った二人が綱引きをしていると考えてください。

片方は前歯群、もう片方は奥歯群。

奥歯は重量が大きく力もあるので前歯群を簡単に引き寄せます。

しかし船に乗っているので奥歯群の船が絶対に動かない訳ではありません。

少なからず奥歯群の船も動いてしまいます。

この奥歯群の船が動いてしまうことを矯正治療ではアンカレッジロス、またはアンカーロスと言われています。

奥歯が前に動いてしまう、アンカーロスとは?

矯正治療で奥歯が前に移動してしまうことがすべての症例匂いて悪い訳ではありませんが、多くの治療で奥歯の前方向への移動(アンカレッジロス)はデメリットの方が多いのです。

①奥歯が前に移動する(アンカレッジロス)と歯並びを治すためのスペースをふさいでしまう。

歯を矯正治療で治す方の多くは歯のガタガタを並ばせて綺麗に揃えたい方が多いと思います。

歯を並べる場合、歯を抜歯してスペースを作るか、歯と歯の間を削ってスペースを作るか、奥歯を奥の方へ移動させてスペースを作る方法があります。

せっかく作った歯並びを良くするためのスペースに奥歯が移動してスペースをふさいでしまうことがあります。

②奥歯が前に移動する(アンカレッジロス)と上下の噛み合わせがうまく作れないことがある

矯正治療をする上でポイントとなる噛み合わせは第一大臼歯の噛んでいる位置関係です。アングルの分類とも呼ばれています。

横から見て下の第一大臼歯の中央付近にちょうど上の第一大臼歯が噛みこんでいる状態(その時少し下の第一大臼歯が出ている)が理想の噛み合わせアングル1級と言われています。下図

food.001

 

しかしアンカーロスした歯の噛み合わせは下の第一大臼歯より前側に上の第一大臼歯が噛みこんでいます。

この噛み合わせをアングル2級と言われていて1級に比べればいいとは言われません。

③奥歯が前に移動する(アンカレッジロス)だけでなくもともと歯はそのままにしていると前方向に移動してしまう。

もともと歯はスペースがあると前の方へ倒れこんだり移動したりするような仕組みになっています。

歯のスペースを確保するためには奥歯は奥側に移動して欲しいのですが、前方向への空隙閉鎖は矯正治療にとってはデメリットでしかありません。

このようにアンカーロスは矯正治療上デメリットの方が多いと言えます。アンカーロスを起こさないためにパラタルバーはつくられたと言っても過言ではありません。

パラタルバーの役目

パラタルバーは両サイドの第一大臼歯を相互に固定することでアンカレッジロスを防ぎます。

バンドとバーで固定された第一大臼歯はそう簡単に前方向へは移動しません。

パラタルバー装着により奥歯に強力な固定源をつくられたので前歯を簡単に引っ張れます。

またパラタルバーを使用していないと第一大臼歯は外側にも広がります。外側に広がってしまうと歯並び自体も広がってしまいます。

パラタルバーで奥歯の前方向、外側方向への移動を防いでくれます。

パラタルバーのデメリット

と言っても装置を口蓋につけるので弱点もあります。

①喋りづらい

②舌で触ると違和感

③食べづらい、味がわからない

矯正治療は長期間かかるのでパラタルバーには慣れるしかありません。最初は違和感がありますが、多くの方で慣れていると思われます。

もし矯正治療でパラタルバーが必要と言われても投げ出さずしっかり頑張りましょう。

むしろパラタルバーを薦めている先生は歯並びのことをしっかり考えているのです。

まとめ

パラタルバーについて、矯正治療のアンカレッジロスのことも含めてお話いたしましたが少しは理解できましたでしょうか。

現在アンカースクリューの登場でパラタルバーと組み合わせて歯列の奥側への移動や歯列の圧下(歯を沈める力)も可能になりました。

これにより歯を三次元的に移動させることができます。

矯正には様々な手法がありますのでその中の一つパラタルバーについてお話させていただきました。

→あなたの歯のお悩み聞かせてください。