巣鴨の歯医者「ヴェリ歯科クリニック」が発信する歯の知識

MTAセメントはどこまで歯を残すことができる?歯の寿命を延ばす新世代セメントのこと

こんにちは、巣鴨ヴェリ歯科クリニックの田島です。

『残念ですが、歯に穴が空いています。長くは持てないので抜歯しましょう。』

『根の病気が大きすぎて治すことができません。抜歯しましょう。』

『虫歯が大きすぎて削った場所が神経まで到達しました。神経をとりましょう。』

など、歯医者さんで治療をしているとこのようなこと言われたりします。

でも、本当に抜歯しないといけないのでしょうか。

本当に神経を取らざるをえないのでしょうか。

抜歯する前に、神経を取る前に知ってほしい新世代の歯科治療について今回はお話します。

その名も

MTAセメント

あなたのその歯もMTAセメントで治療できるかもしれません。

MTAセメントの使われ方

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MTAセメントとはmineral trioxide aggregate の略で簡単に言うと歯科用コンクリートセメントのようなものです。

MTAセメントについての効果や適応などについては以前のブログを参考にしてみてください。

MTAセメントについてもっと詳しくはこちら

今回は万能なMTAセメントが実際どのように使われているのか。をお話します。

神経を守る保護剤として

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虫歯を治療した時にどうしても虫歯が深くて神経を取らざるをえない時があります。

削った箇所の虫歯が全て取りきれていて偶発的に神経が出た場合、MTAセメントが使える場合があります。

普通神経が出てきた時点で全ての神経を取らないといけないのですが、MTAセメントをむき出しになった神経の場所に塗布することで神経を温存させることができます。

これはMTAセメントに細胞が誘導させる機能があるからです。

神経を覆ったMTAセメントの部分に細胞が誘導され、歯の組織が作られます。(新生象牙質 またはデンティンブリッジと言います。

虫歯が多くても神経を温存できることがMTAセメントでは可能になりました。

ちなみに現在日本の薬事法ではMTAセメントの治療はこの用途のみ使用可能となっています。(保険適用の治療法ではありません。)

根の治療を成功させる治療剤として

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歯の根が腐ってしまった方や、昔神経の治療をされて病気が再発された方など。

もう一度根の治療をするとなると治療が成功する確率は初回に比べ著しく減ります。

再根管治療について詳しくはこちら

前に行っていた根管(歯の神経の通り道)の形が著しく崩壊してしまった場合、抜歯になる可能性もあります。

そんな時に崩壊が激しい根管を通常の封鎖剤で封鎖するのではなくMTAセメントで封鎖することができます。

MTAセメントで根管充填するメリット

①親水性(水と反応して固まる性質)があるので浸出液や水分があっても固まるため封鎖性が従来のガッタパーチャよりすぐれている

②レントゲンに映るので治療した場所がどうなっているかがわかる。

③体に無害であるため拒否反応が起こらない

④崩壊した根管(トランスポーテーション、リッジ、根尖孔破壊)の部分も従来法より封鎖しやすい

MTA根管充填のデメリット

①基本的に保険治療では行えない

②治療剤がセメントのため、二次治療が困難

③操作が複雑  (現在は簡単にな薬剤もある)

 

外科的な根の治療の封鎖剤として(逆根管充填)

歯根端切除術と昔は言われていて、根管治療ができない症例として口腔外科医が主に行っていました。

歯の根元を含めて大きく削り、アマルガム(水銀)を詰めていた時代がありましたが現在の治療ではその手技も大きく変わります。

小さく歯の病巣がある根元のみを小さく開け、歯の根の先を3mmほど短くします。

その後、専用の器具を用いて根の先にMTAセメントを充填します。

現在では海外の90%以上の歯科医はこの治療ではMTAセメントを使用します。

歯に穴が空いてしまった時の補修剤として

歯に穴が開いてしまう原因として根の治療時の偶発的な事故が主に挙げられます。

歯に穴が開くことをパーフォレーションと言いますが、MTAセメントが世に現れる前では、スーパーボンド(歯科用セメント)などのレジン系の補修剤がありましたが極めて予後は悪く、パーフォレーションした歯の多くは抜歯になっていました。

しかしMTAセメントが導入されてからのパーフォレーション症例では高い実績が評価されています。

これはMTAセメントに高い骨誘導能(骨の細胞が寄ってくる性質)があるからです。

側枝からの漏洩を止める封鎖剤として

歯の根が再感染を起こす原因として歯の根の先端からの感染も考えられますが、側枝からの感染も考えられます。

側枝とは歯の根の枝分かれした根管の事で、幾重にもなり枝分かれした根管も存在します。

メインの根管が綺麗に薬が詰まっていても側枝がたくさんあれば感染する確率は高くなります。

その際もし側枝を発見したらMTAセメントで封鎖することで治る場合もあります。

『何度根の治療をしてもずっと腫れるし、なかなか良くならないな。』

なんて場合は側枝が原因なのかもしれません。

MTAセメントはいくら?

残念ながら日本の薬事法では神経を保護する覆髄剤として使用する以外の用途は認められておりません。

治療はあくまで自費診療扱いになりますので各歯科医院によって金額は変わります。

あくまで参考程度で

覆髄剤として  5千円〜3万

パーフォレーションリペア 1万〜3万

MTA根充 5万〜10万(マイクロ付き)

まとめ

海外のリサーチではMTAセメントの実績は高く評価されています。

また文献や研究も多くされていて海外の根管治療の薬剤としては必要不可欠なものとして扱われています。

日本ではまだ全ての歯科医院では導入はしていませんが、その操作方法も最近では簡略化されています。

MTAセメントは魔法のセメントではありませんが、多くの歯を救えるものです。

もしご自身の歯の治療にMTAセメントが使ってもらいたいとお考えならば一度担当の先生と相談してみてくださいね。